豆知識
2026/07/01
海から何kmでさびやすくなる?飛来塩分と腐食速度の関係を解説
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「同じ仕様なのに、海沿いにある設備だけさびやすい気がする。」と思ったことはありませんか?
海沿いの橋梁や鉄骨、設備機器は、内陸部に比べて早く腐食する傾向にあります。
原因の一つが、海から運ばれてくる「飛来塩分」です。
本記事では、飛来塩分が腐食速度に与える影響をわかりやすく解説するとともに、海からの距離ごとのリスクや素材別の耐食性、防食対策について紹介します。
自社設備や構造物の塩害リスクを把握し、適切なメンテナンス計画を立てたい方は必見です。
飛来塩分とは?海沿いで金属が錆びやすくなる理由
飛来塩分とは、海面の気泡が破裂する際に生じる微小な水滴が、塩分を含んだ水分または乾燥した塩の粒子として風によって陸上に運ばれてくる海塩粒子のことです。
海では海面の気泡が破裂する際に細かな海水の粒子が発生し、この粒子は海風によって運ばれ、橋梁や鉄骨、配管、設備機器などの表面に付着します。
金属は本来、水分や酸素によって徐々に腐食しますが、表面に塩分が付着すると腐食反応が活発になり、さびの発生や進行が早まります。
そのため海岸近くの構造物や設備は、内陸部に比べて厳しい腐食環境にさらされているのです。
腐食速度を理解するための基礎知識
飛来塩分と腐食速度の関係を理解するためには、まず金属がなぜさびるのかを知ることが大切です。
まずは上記2点を整理していきましょう。
さびが発生する仕組み
鉄がさびる主な原因は、水分と酸素です。
鉄の表面に水が付着すると、鉄が溶け出す反応と酸素が還元される反応が起こり、この電気化学反応によって酸化鉄、いわゆる「赤さび」が生成されます。
飛来塩分が存在すると、水が電気を通しやすくなるため、この電気化学反応がより活発になります。
つまり塩分は、鉄のさびるスピードを加速させる働きがあるのです。
そのため海沿いでは、同じ塗装仕様や同じ材料を使用していても、内陸部よりも早く腐食が進行します。
腐食速度を左右する3つの要因
腐食速度は、一般的には次の3つの要因が大きく影響します。
つまり「塩分」「水分」「大気汚染物質」の3つが重なる環境ほど、金属にとっては厳しい腐食環境です。
海沿いの地域は飛来塩分が多いだけでなく、高温多湿な環境になりやすいため、腐食が進みやすい条件が揃っています。
そのため、立地環境に応じた防食対策や定期的な点検が重要です。
飛来塩分は腐食速度にどのような影響を与えるのか
一般的には、飛来塩分量が多い環境ほど金属表面に塩分が蓄積しやすくなり、さびの発生や腐食の進行が早くなります。
防食設計やメンテナンス計画を立てる際には、飛来塩分量が重要な判断材料として活用されています。
例えば、海岸付近では重防食塗装や溶融亜鉛めっきが採用されることが多く、環境の厳しさに応じて防食仕様を選定することが一般的です。
ただし、飛来塩分量は海からの距離だけで決まるわけではありません。
風向きや地形、周辺の建物の有無によっても大きく変化するため、同じ沿岸地域でも腐食リスクが異なる場合があります。
では実際に、海からどのくらい離れると飛来塩分の影響は小さくなるのでしょうか。次章では、海岸からの距離と塩害リスクの関係について解説します。
海から何kmまで塩害の影響を受けるのか
海から離れるほど飛来塩分量は減少する傾向がありますが、「何km離れれば安全」とは言い切ることはできません。
飛来塩分量は一般的にmddという単位で表され、この数値が大きいほど塩分の影響を受けやすくなります。
また、下表のC1~C5は腐食環境の厳しさを示す区分で、数字が大きくなるほど腐食しやすい環境です。
海岸からの距離
飛来塩分量(目安)
腐食環境の目安
波しぶきが直接当たる岩礁付近
数mdd以上
極めて厳しい(C5相当)
海岸線〜200m程度
0.5〜数mdd
非常に厳しい(C4〜C5)
200m〜1km程度
0.1〜0.5mdd
厳しい(C3〜C4)
1〜数km
0.05〜0.1mdd
中程度(C2〜C3)
内陸(数km以上)
0.05mdd未満
比較的穏やか(C1〜C2)
※数値は地形・風向・季節により大きく変動します。あくまで参考値です。
海から直接風が吹き込む場所や高台、橋梁などでは、数km離れていても飛来塩分の影響を受ける場合があります。
逆に山や建物が海風を遮る環境では、海岸に近くても塩害が比較的軽微なケースもあるでしょう。
そのため重要な設備や構造物では、距離だけで判断するのではなく、周辺環境や過去の腐食状況も考慮する必要があります。
素材別の腐食速度の違いについて
同じ環境でも、使用する素材によって腐食速度は大きく異なります。
一般鋼材は強度やコスト面で優れていますが、塩害環境では腐食しやすい素材ですので、塗装やめっきによる防食処理が欠かせません。
溶融亜鉛めっき鋼材は、表面の亜鉛層が鋼材を保護するため、高い耐食性を発揮します。
海沿いのフェンスや架台、橋梁部材などにも広く使用されています。
ステンレス鋼は錆びにくい素材として知られていますが、SUS304は飛来塩分の多い環境では腐食が発生する場合があり、沿岸部ではSUS316が採用されることも少なくありません。
素材選定を行う際は、初期コストだけでなく使用環境や期待できる耐用年数も考慮しましょう。
飛来塩分が多い環境での防食対策
飛来塩分の影響は完全に無くせないため、適切な防食対策を行うことが大切です。
上記の代表的な防食方法について、以下で詳しく見ていきましょう。
塗装による防食
塗装は最も一般的な防食方法です。
塗膜によって鋼材と外部環境を遮断し、水分や酸素、塩分の侵入を防ぎます。
ただし、塗膜が劣化したり傷が入ったりすると、その部分から腐食が進行するため、定期的な点検や再塗装が必要です。
海沿いの厳しい環境では、エポキシ樹脂塗料やウレタン塗料などを組み合わせた重防食塗装が採用されています。
防錆塗料の種類については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
参考記事:防錆塗料の種類はどう使い分ける?それぞれの特徴をわかりやすく解説
溶融亜鉛めっきによる防食
溶融亜鉛めっきは、鋼材表面に亜鉛の被膜を形成する防食方法です。
最大の特徴は「犠牲防食作用」となります。
仮に傷がついて鋼材が露出しても、亜鉛が先に腐食することで鋼材を保護します。
海沿いのような厳しい腐食環境でも長期間にわたって防食効果を維持しやすく、橋梁部材や鉄塔、フェンスなど幅広い分野で利用されている防食技術です。
溶融亜鉛めっきの防錆メカニズムについては、以下の記事をご覧ください。
参考記事:溶融亜鉛めっきとは?防錆のメカニズムや他のめっきとの違いを解説
ジンク塗料による補修・メンテナンス
溶融亜鉛めっき部材の切断面や溶接部、施工中に発生した傷などは、防食性能が低下しやすい部分です。
こうした箇所の補修に活用されるのがジンク塗料です。
ジンク塗料には高濃度の亜鉛粉末が含まれており、溶融亜鉛めっきと同じような犠牲防食作用を発揮します。
部分補修が容易なため、既設構造物のメンテナンスにも適した塗料です。
飛来塩分が多い環境では、こうした補修を適切に行うことが構造物の長寿命化につながります。
日新インダストリーでは、ジンク塗料を豊富にラインナップしております。
以下より製品詳細をご覧ください。
■ジンク塗料の商品ラインナップはこちら
フォーム入力無しでダウンロードいただけるカタログもございます。製品スペックの比較などにご利用ください。
製品カタログ(pdf)
※フォーム入力なしでダウンロードいただけます。
※紙面の郵送も可能です。お電話かフォームよりお気軽にお問い合わせください。
飛来塩分と腐食速度のよくある誤解
飛来塩分と腐食については、以下のような誤解をお持ちの方が多くいらっしゃいます。
それぞれの誤解について、正しい回答を紹介します。
正しい知識を持つことで、過剰な対策や対策不足を防止可能です。
海から離れていれば安全?
海から離れるほど塩害リスクは低くなりますが、必ずしも安全とは限りません。
飛来塩分の量は距離だけでなく、風向きや地形、建物の配置などによって大きく変わります。
実際に海から数km離れた工場や橋梁でも、飛来塩分による腐食が問題になっています。
距離はあくまで目安であり、現場ごとの環境を確認することが大切です。
ステンレスはさびない?
ステンレスはさびにくい金属ですが、絶対にさびないわけではありません。
特に飛来塩分が多い環境では、ステンレスであってもさびが発生することがあります。
気づかないうちに腐食が進行し、穴あきや劣化が起こることもあるため注意が必要です。
海沿いでステンレスを使用する場合は、「ステンレスだから安心」と考えるのではなく、材質や使用環境に応じた選定を行うことが大切です。
飛来塩分を理解して適切な防食対策を選ぼう
飛来塩分は、海沿いの構造物や設備の寿命に大きな影響を与える要因です。
海から近いほど塩害リスクは高まりますが、実際の腐食環境は距離だけでは判断できません。
また一般鋼材や溶融亜鉛めっき鋼材、ステンレスなど、素材によって腐食の進み方は大きく異なります。
構造物を長く使用するためには、環境に適した材料選定と防食対策が欠かせません。
塗装や溶融亜鉛めっきに加え、傷や切断面を適切に補修できるジンク塗料を活用することで、防食性能を維持しやすくなります。
日新インダストリーでは、多数のジンク塗料を取り扱っています。
飛来塩分による腐食でお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。