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豆知識
2025/06/17
溶融亜鉛めっきと異種金属が接触したら腐食する?メカニズムを解説

「溶融亜鉛めっきが早期で腐食してしまった…。」とお困りではありませんか?

もしかすると溶融亜鉛めっきが異種金属と接触して腐食が進んでしまっているのかもしれません

本記事では溶融亜鉛めっきの異種金属接触腐食についてわかりやすく解説します。

異種金属接触腐食を防ぐ方法も説明しますので、お困りの方は必見です。

 

溶融亜鉛めっきと異種金属の接触による腐食とは?

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画像:金属のイオン化傾向(イオン化傾向が大きい物質ほど腐食しやすい)

電位の異なる2つの金属が水や湿気などの電解質の存在下で接触すると異種金属接触腐食が発生します。

別名でガルバニック腐食と呼ばれる現象です。

異種金属接触腐食は、電位の低い金属(アノード)が電位の高い金属(カソード)よりも優先的に腐食する性質が関係しています。

電位が低いとは、酸化されやすく、イオン化しやすい状態のことです。

上の図で見ると、左にいくほどイオン化しやすく電位が低いということになります。

溶融亜鉛めっきは鉄よりも亜鉛の方が酸化(錆び)やすいというイオン化傾向を利用した「犠牲防食」によって鉄を守ります

しかし、この特性が他の金属と組み合わせることで、思わぬトラブルになるのです。

■アノードとカソードについて

アノード(電子を放出する負極)

カソード(電子を受け取る正極)

電位が低い

電位が高い

イオン化しやすい

イオン化しにくい

腐食しやすい

腐食しにくい

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異種金属接触腐食を理解するためには、上の画像で示す亜鉛と銅のボルタ電池の例がわかりやすいでしょう。

イオン化しやすい亜鉛から電子が放出されて、銅に移動しているのがわかります。

電子を失った亜鉛は腐食(酸化)していくというメカニズムです。

 

溶融亜鉛めっきと避けるべき異種金属

溶融亜鉛めっきとさけるべき異種金属には、以下のようなものがあります。

  • 銅および銅合金(黄銅、青銅など)
  • ステンレス
  • ニッケル、クロムめっき製品


銅(Cu)やニッケル(Ni)など亜鉛よりもイオン化しにくい金属と触れると、亜鉛メッキ層の腐食が急速に進み、本来発揮されるべき保護機能が発揮されなくなります

溶融亜鉛めっき層と銅が接触し、さらに雨水や湿気など腐食しやすい環境で使用された場合、亜鉛めっき層が数ヶ月で消失することもあるほどです。

ステンレスは鉄やニッケルなどの合金のため元素記号がありませんが、イオン化傾向の画像に当てはめると銅(Cu)と同じような位置となり、亜鉛との異種金属接触腐食が進みやすい金属といえます。

ステンレスのねじやボルトを亜鉛めっき鋼板に使用すると、ボルト周囲から白さびが発生しやすくなるのはこのためです。

 

異種金属接触腐食の度合いについて

異種金属接触腐食の度合いは以下の要素に大きく影響されます。

  • 金属間の電位差:差が大きいほど腐食は起こりやすい
  • 塩分や酸性物質が多い環境:海岸・工業地域では腐食が加速する
  • 湿度と結露:水分が電解質の役割になるので腐食が進行しやすい
  • 接触面積の比率:面積の小さい亜鉛と面積の大きい銅の組み合わせは特に危険


このように色々な要素が複合することで、異種金属接触腐食の進行度合いが変わります。

使用する用途にも気を付けるようにしましょう。

 

異種金属接触腐食の防止方法

異種金属接触腐食を防止するためにはいくつかの方法があります。以下は代表的な防止方法です。

  • 電気的絶縁
  • 同系列の金属の使用
  • 適切なコーティング


それぞれの内容を確認していきましょう

 

電気的絶縁

最も効果的な方法は異種金属の間を電気的に絶縁することです

ボルト部にはナイロンやPTFEなど樹脂系の非導電性ワッシャーやスペーサー、ボルト穴には非導電性の絶縁性ブッシングを使うことによって異種金属腐食を抑えられます。

異種金属の接触面に絶縁性テープやシートを付ける簡易的な方法も有効です。

 

同系列の金属の使用

異種金属接触腐食は、金属間の電位差が大きいほど起こりやすくなります。

できるだけ電位差の小さい金属同士を組み合わせることで腐食を最小限に抑えることが可能です

例えば、溶融亜鉛めっきの鋼板には亜鉛めっき加工をしたボルトやナットを使用するなどの方法があります。

 

適切なコーティング

異種金属の間に以下のようなコーティングを施すことで、腐食を防ぐことが可能です。

  • 溶融亜鉛めっき部材の切断面やボルト、ナット類にジンク塗料を塗布する
  • 耐久性が高いエポキシ系塗料を塗布する
  • 金属間にシリコン系シーラントを充填して水分の侵入を防ぐ


コーティングはどちらか一方だけではなく、両方の金属に施すようにしましょう。

コーティングは傷が入るとその部分から水分や塩分が侵入して腐食の原因になりますので、定期的なメンテナンスが必要です

 

ジンク塗料による異種金属接触腐食を防止する方法

異種金属接触腐食を防ぐコーティングの中で、最もおすすめなのがジンク塗料によるコーティングです。

ジンク塗料とは塗料の中に高濃度の亜鉛末が含まれたものであり、仮に塗膜に傷ができても、亜鉛粒子の存在によって犠牲防食機能が継続します

ジンク塗料であれば、前述したステンレスや銅でも溶融亜鉛めっきと共存可能です。

例えば、溶融亜鉛めっき鋼板にステンレス製のボルトやナットを使う場合に、接合部にジンク塗料を塗っておけば腐食の進行を抑えられます。

他にも溶融亜鉛めっき鋼板の切断面や溶接部は亜鉛層が失われるため、ジンク塗料での補修が必須です。

異種金属接触腐食との複合を防ぐためにも、亜鉛層が失われる箇所は確実に補修するようにしましょう。

 

異種金属接触腐食の防止にはジンク塗料が効果的

溶融亜鉛めっきが早期で腐食した場合は、まず接触面に異種金属が使用されていないか確認することが大切です

特にボルトやナットなどの締結部分や取り付け金具にはステンレスやクロムめっき品が使われることが多いため、入念に確認しましょう。

 

溶融亜鉛めっきの異種金属接触腐食を防ぐためにはジンク塗料での施工や補修が効果的です。

日新インダストリーではジンク塗料専門メーカーとして幅広いラインナップでお客様のニーズにお応えします。異種金属接触腐食でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

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