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2025/12/25
溶融亜鉛めっきの見分け方|メンテナンス時期を見逃さないサインとは?
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「うちの建物の鋼材、いつ頃メンテナンスが必要なの?」
このような疑問をお持ちの建物所有者や管理者の方は多いのではないでしょうか?
築15~25年程度の建物では、そろそろメンテナンスを検討する時期に差し掛かっています。
適切な判断のためには、まず現在の鋼材の表面処理が何なのかを知ることが大切です。
本記事では、溶融亜鉛めっきの見分け方から、適切なメンテナンス時期の判断方法まで、わかりやすく解説しています。
溶融亜鉛めっきの補修方法についても解説していますので、構造物や設備のメンテナンス担当者は必見です。
これって溶融亜鉛めっき?見分け方を知ろう
構造物や建物のメンテナンスを行う際に、適切な判断をするためには、まず鋼材の表面処理が溶融亜鉛めっきがどうか知ることが大切です。
溶融亜鉛めっきの見分け方について、上記の3つを確認していきます。
見た目で判断する
まずは見た目の色と光沢をチェックしてみましょう。
以下の特徴があれば、溶融亜鉛めっきである可能性が非常に高いです。
溶融亜鉛めっきは、表面にスパングルと呼ばれる結晶模様が見られることが多く、やや銀白色で光沢があります。
年数が経過すると光沢は失われ、次第に落ち着いた灰色へと変化するのが特徴です。
使用されている場所から推測する
溶融亜鉛めっきは、長期間にわたる防錆性能が求められる場所で多く採用されています。
使用されている場所を確認することで、溶融亜鉛めっきかどうかを推測可能です。
以下の用途では溶融亜鉛めっきが多く使用されています。
上記は雨風や紫外線に常時さらされるため、塗装よりも耐久性の高い溶融亜鉛めっきが選定されやすい部位です。
人の手が頻繁に届かない高所、点検や再塗装が簡単ではない場所ほど、初期段階で溶融亜鉛めっきが採用されている可能性が高くなります。
建築時期から推測する
溶融亜鉛めっきかどうかを判断するうえで、建築された時期も有効な手がかりです。
日本では、高度経済成長期以降に鋼構造物が急増し、防錆対策の重要性が高まりました。
腐食による事故や維持管理コストの問題が顕在化したことで、より耐久性の高い表面処理として溶融亜鉛めっきが広く採用されていきます。
1990年代以降の建物では、溶融亜鉛めっきの採用が一般的になりました。
ライフサイクルコストを重視する考え方が普及し、初期コストが多少高くても、長期的にメンテナンス負担を軽減できる工法が選ばれるようになったためです。
溶融亜鉛めっきか見分けられない場合の調べ方
見た目や設置場所がわかっても、溶融亜鉛めっきか見分けられない場合もあるでしょう。
その場合は、さらに踏み込んで以下2つの方法で調べていきます。
1つ目は建築確認台帳での確認です。
各自治体の建築指導課で建築確認台帳記載証明書を取得すると、建築年月日が記載されているので、そこから溶融亜鉛めっきかどうか推測します。
2つ目は設計図書や施工図面の確認です。
建物の図面に表面処理の仕様が記載されている場合があるので、※「HDZ」「ドブ付けめっき」「溶融亜鉛めっき」などの記載を探しましょう。
それでも溶融亜鉛めっきかどうか見分けられない場合は、専門業者による現地調査を依頼することも方法の一つです。
膜厚測定や成分分析によって、溶融亜鉛めっきかどうか正確に判定できます。
※2021年にJIS規格の改正があり、現在は「HDZT」に変更されています。
比較的新しい設計図書や施工図面では「HDZT」を探しましょう。
溶融亜鉛めっきの寿命について
溶融亜鉛めっきの寿命は一律ではなく、膜厚や使用環境によって左右されるため、仕組みを理解したうえで判断することが大切です。
溶融亜鉛めっきは、亜鉛が鉄よりも先に腐食する「犠牲防食作用」によって防食性能を発揮します。
亜鉛層は永続的なものではなく、屋外環境で少しずつ消費されていくのが特徴です。
一般的な大気環境では、亜鉛の消耗量は年間およそ1μm程度とされており、膜厚が厚いほど耐用年数も長くなります。
例えば、初期のめっき膜厚が50μm程度であれば、単純計算で耐用年数は数十年単位です。
しかし、これはあくまで目安であり、海岸地域のように塩分の影響を受けやすい環境や、腐食性の高い場所では、亜鉛の消耗速度が早まり、耐用年数は短くなります。
ここで注意したいのは、「寿命=突然使えなくなる時期」ではないという点です。
亜鉛層は徐々に薄くなり、防錆性能も段階的に低下していくので、定期的なメンテナンスが欠かせません。
溶融亜鉛めっきの寿命については、以下の記事で環境ごとの耐食性の目安について解説しています。こちらもぜひご覧ください。
参考:溶融亜鉛めっきは高い耐食性を誇る!耐食性を保つポイントを解説
メンテナンスする絶好のタイミングを見極める
徐々に防錆性能が低下する溶融亜鉛めっきにおいては、メンテナンスするタイミングを見極めることが大切です。
この2点について確認していきましょう。
20年経過時点での状態を確認する
溶融亜鉛めっき構造物のメンテナンスを考えるうえで、一つの重要な節目となるのが「設置から約20年」が経過したタイミングです。
築20年程度を迎えた建物では、次のようなポイントを意識してチェックしましょう。
溶融亜鉛めっきは、施工直後は銀白色で比較的明るい外観をしていますが、経年とともに落ち着いた灰色へと変化していきます。
この変化自体は自然なものであり、必ずしも劣化を意味するものではありません。
一方で注意したいのが、部分的に薄い茶色の変色が見られるケースです。
この色調は、単なる汚れや付着物と誤認されがちですが、実際には亜鉛層の消耗が進み、次の段階へ移行しつつあるサインとなります。
合金層露出のサインを見逃さない
溶融亜鉛めっきは、表面側の純亜鉛層と、鋼材と反応して形成される内側の合金層から構成されています。
まず外側の純亜鉛層が徐々に消耗し、その後に合金層が表面に現れてきます。
この合金層が露出し始めた状態の代表的な見た目が「薄い茶色の変色」です。
一見すると錆の初期段階のようにも見えますが、鋼材本体が錆びているわけではありません。
あくまで、溶融亜鉛めっきの防食層が次の段階に入ったことを示すサインです。
この状態は、まだ鋼材本体に腐食が到達しておらず、防錆性能は失われていません。
このタイミングで適切な補修を行えば、大幅に寿命を延ばすこともできるので、悲観しなくても大丈夫です。
ジンク塗料での溶融亜鉛めっき補修
溶融亜鉛めっきの劣化が進行していても、すべてのケースで再めっきや部材交換が必要になるわけではありません。
合金層露出のサインが部分的に見られる程度であれば、ジンク塗料による補修が現実的かつ合理的な選択肢となります。
ジンク塗料の使用方法も合わせて確認していきましょう。
合金層露出のサインが出たらジンク塗料で補修が最適
合金層が露出し始めた段階は、鋼材本体はまだ腐食しておらず、防錆性能も完全には失われていない状態です。
このタイミングで補修を行うことで、溶融亜鉛めっき本来の防食機能を補完し、構造物全体の延命が可能になります。
局部的な劣化であれば、ジンク塗料による部分補修で十分なケースがほとんどです。
ジンク塗料は亜鉛を多量に含んでおり、溶融亜鉛めっきと同様に犠牲防食作用によって鋼材を保護するため、めっき補修との相性がとても良い塗料です。
ジンク塗料は溶融亜鉛めっき面に直接塗装でOK
ジンク塗料は、溶融亜鉛めっき面に直接塗装できるのが特徴です。
表面の汚れや付着物を取り除けば、ブラスト処理を行わずとも施工できる場合が多く、現場対応しやすい補修方法となります。
ジンク塗料は、塗膜中に高濃度の亜鉛粉末を含んでおり、塗装後はそれらの亜鉛粒子同士、さらに下地の亜鉛めっき層や鋼材とにつながることで、防錆効果を発揮します。
一方で注意が必要なのが、ジンク塗料の下にプライマーなどの下地塗装を施工してしまうケースです。
この場合、ジンク塗料の犠牲防食作用が十分に発揮されなくなります。
この状態では、単なる塗膜としてしか機能しなくなるため、ジンク塗料は溶融亜鉛めっき面に直接塗装しましょう。
ジンク塗料で補修するメリット
ジンク塗料による補修のメリットは、単に施工が簡単という点だけではありません。
必要な箇所だけを補修できるため、コストを抑えての延命対策が可能です。
部分的な劣化に対して柔軟に対応できるため、定期点検と組み合わせることで、計画的なメンテナンスを実現します。
ジンク塗料での補修は完全に劣化してから対応するのではなく、「劣化の兆候が出た段階で手を打つ」予防保全として有効です。
溶融亜鉛めっき構造物の寿命をさらに延ばし、長期的な維持管理コストの低減にもつながります。
溶融亜鉛めっきの補修でお困りの方はお問い合わせください
溶融亜鉛めっきは、高い防錆性能を持ち、多くの建築物や構造物で活用されています。
これらは「長寿命が当たり前」とされていますが、定期的な点検を行い、適切なメンテナンスを行わなければ、寿命は短くなってしまいます。
溶融亜鉛めっきの部分的なメンテナンスには、ジンク塗料が最適です。
日新インダストリーでは、補修で使用できるジンク塗料を、お客様のニーズに合わせて多数取り揃えております。
溶融亜鉛めっきの補修でお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。