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「ジンクリッチペイントは、なぜ無機ジンクと有機ジンクの2種類があるの?」と疑問に思ったことはありませんか?
無機ジンクと有機ジンクは、どちらも塗膜中に高濃度の亜鉛粉末を含み、亜鉛による犠牲防食を利用して鋼材を腐食から守る塗料です。
両者はバインダーや硬化の仕組み、施工条件などが異なり、用途に応じて使い分けられています。
では、なぜ無機ジンクと有機ジンクという2種類の塗料が存在するのでしょうか。
その背景を理解するには、ジンクリッチペイントがどのように開発され、技術が進化してきたのかを知ることが大切です。
本記事では、無機ジンクと有機ジンクの歴史をたどりながら、両者の違いや現在の使い分けについて解説します。
無機ジンクと有機ジンクの歴史を簡単に整理
年代
区分
主な出来事
1930年代
無機ジンク
オーストラリアで電気技術者のVictor Charles Nightingallによって、亜鉛粉末とケイ酸塩を利用した無機ジンクが開発される
1937年
無機ジンク
Victor Charles Nightingallが特許を出願
1939年
無機ジンク
英国特許を取得
1950年代後半~1960年代
無機ジンク
自己硬化型のアルキルシリケート系が登場し、実用性が向上
その後
有機ジンク
エポキシ樹脂などをバインダーとする有機ジンクが実用化
1970年代~
両方
日本でも鋼構造物の重防食塗装として普及
無機ジンクの誕生と発展
ジンクリッチペイントの歴史は、無機ジンクから始まりました。
まずは無機ジンクの歴史を振り返っていきましょう。
1930年代に無機ジンクが誕生
ジンクリッチペイントの歴史をたどると、1930年代のオーストラリアに行き着きます。
当時、電気技術者であり発明家でもあったVictor Charles Nightingallは、溶融亜鉛めっきに代わる新しい防食技術の開発に取り組んでいました。
溶融亜鉛めっきは、鋼材を溶融した亜鉛に浸漬して防食皮膜を形成する方法であり、高い防食性を持つ一方、大型の構造物ではめっき槽の大きさなどが制約となります。
そこでNightingallは、ケイ酸ナトリウム(液体ガラス)の水溶液に亜鉛粉末を混合し、鋼材表面に塗布する方法を考案しました。
これが無機ジンクシリケートコーティングの先駆けとなる技術です。1937年にオーストラリアで特許を出願し、1939年には英国特許を取得しました。
出典:Australasian Corrosion Association「Inorganic Zinc Coatings: History, Chemistry, Properties, Applications and Alternatives」
その後、この技術は「Galvanite」として製品化され、大型構造物への施工にも利用されるようになります。
しかし、初期の無機ジンクは、焼付け処理が必要な「加熱硬化型」であり、現場で施工するには制約がありました。
自己硬化型の登場で無機ジンクが普及
1950年代になると、シリケート系技術の発展に伴って無機ジンクの技術も進歩します。
初期の無機ジンクでは加熱による硬化が必要でしたが、その後、後処理によって硬化させるタイプや、大気中の水分と反応して硬化する自己硬化型が開発され、施工性が向上しました。
これにより、特別な加熱処理を必要とせずに施工できるようになり、無機ジンクの実用性が高まります。
その後、無機ジンクは高い防食性に加えて、耐熱性や耐摩耗性などにも優れる防食塗料として発展し、橋梁や大型鋼構造物などの新設時に使用されるプライマーとして普及していきました。
有機ジンクの登場と普及
無機ジンクとは異なる技術として登場したのが、エポキシ樹脂などの有機バインダーを用いた有機ジンクです。
有機ジンクの歴史を詳しく確認していきましょう。
無機ジンクに続いて有機ジンクが実用化
有機ジンクは、エポキシ樹脂などの有機バインダーに亜鉛粉末を配合したジンクリッチペイントです。
特にエポキシ系の製品は、現在も防食用のプライマーとして使用されています。
出典:Association for Materials Protection and Performance「Zinc-rich Epoxy Primer」
有機バインダーを採用したことによる最大のメリットは、施工性の向上です。
無機ジンクは塗膜中にボイド(空隙)が生じやすく、上塗り時には「ミストコート」と呼ばれる工程が必要です。
また、適切な硬化のために一定の湿度が必要であり、下地処理も高度なブラスト処理が前提となります。
一方、有機ジンクは、製品や仕様によって無機ジンクとは異なる施工条件で使用できるものがあります。
現場での補修や既存塗膜との組み合わせなど、施工条件に応じて選択しやすいことが特徴です。
つまり、有機ジンクは単に無機ジンクの代替品として登場したのではなく、異なる施工条件や用途にも対応できる防食塗料として発展してきたといえます。
日本でも重防食塗装として普及
日本では1970年代以降、橋梁や鉄塔などの鋼構造物を長期間にわたって腐食から守る重防食塗装の整備が進みました。
出典:一般社団法人日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会「長期防錆型(重防食)塗装の歴史と現状」
その中で、無機ジンクと有機ジンクはいずれもジンクリッチペイントとして利用され、それぞれの特性に応じて使い分けられるようになりました。
この歴史からもわかるように、無機ジンクと有機ジンクは単純に「古い塗料と新しい塗料」という関係ではなく、異なるバインダーや施工特性を持つ防食塗料として、それぞれ発展してきたのです。
無機ジンクと有機ジンクの違い
無機ジンクと有機ジンクは、どちらも亜鉛粉末による犠牲防食を利用しますが、バインダーや施工条件などに違いがあります。
両者の違いを整理したのが、以下の表です。
比較項目
無機ジンクリッチペイント
有機ジンクリッチペイント
バインダー
アルキルシリケート
エポキシ樹脂などの有機樹脂
防食性・耐久性
非常に高い(長期)
高い
下地処理
ブラスト処理を基本とする使用が多い
製品・仕様に応じた素地調整
上塗り
ミストコートが必要な場合がある
制約が少ない
硬化条件
適切な湿度が必要
温度依存が比較的少ない
主な用途
新設大型鋼構造物のプライマー
補修・現場施工など施工条件に応じた用途
無機ジンクと有機ジンクの特徴や施工条件については、以下の記事でも詳しく解説しています。
参考記事:無機ジンクと有機ジンクは何が違う?1液と2液の違いも解説
無機ジンクと有機ジンクはどう使い分ける?
無機ジンクと有機ジンクは、どのような環境・用途で使用するかによって選択することが大切です。
新設の大型鋼構造物などでは、施工条件を管理しながら長期的な防食性能を確保する必要があるため、無機ジンクが採用されるケースが比較的多くなります。
一方、既設構造物の現場補修では、工場のように温度や湿度、素地調整などの施工条件を細かく管理できないため、施工性や既存塗膜との組み合わせなどを考慮し、有機ジンクが検討されるケースが多くなります。
補修後に上塗りを行う場合は、上塗り塗料との適合性も確認が必要です。
このように、無機ジンクと有機ジンクの選定では、塗料そのものの性能だけでなく、「どこで、何を、どのように補修・塗装するのか」という施工条件まで考える必要があります。
なぜ補修塗装では有機ジンクが使われるのか?
有機ジンクが補修塗装で使用される理由として、主に3つのポイントが挙げられます。
それぞれを掘り下げて確認していきましょう。
現場で施工しやすい
補修工事は、工場内の新設工事と比較して、温度や湿度、施工スペースなどの条件を細かく管理しにくい場合があります。
有機ジンクは、無機ジンクと比較して施工条件の自由度が高い製品があり、こうした現場での補修にも適しています。
既設構造物の損傷した部分だけを部分的に補修する場合にも使用しやすく、現場での作業性を確保しやすいのがメリットです。
ただし、必要な素地調整や乾燥条件などは製品によって異なるため、実際の施工では製品の仕様や施工要領を確認しましょう。
上塗りとの組み合わせを考えやすい
補修塗装では、周辺の既存塗膜に合わせて上塗りを行うケースがあります。
そのため、補修用の塗料を選ぶ際には、上塗り塗料との適合性や必要な施工工程まで考慮することが大切です。
無機ジンクは、製品や塗装仕様によって、上塗り前にミストコートなどの工程が必要になる場合があります。
ミストコートとは、上塗り塗料を薄く吹き付け、無機ジンクの表面にある空隙を埋める工程です。
この工程を挟むことで、塗装工程が増えるため、施工条件や工程管理への配慮が必要になります。
一方、有機ジンクは、製品によってはミストコートを必要とせずに上塗りできる仕様もあり、補修工程に組み込みやすいことが特徴です。
ただし、使用できる上塗り塗料や施工条件は製品によって異なるため、実際の施工ではメーカーの仕様を確認しましょう。
溶融亜鉛めっきの補修に利用できる
溶融亜鉛めっきは、鋼材の表面を亜鉛皮膜で覆うことで高い防食性を発揮しますが、製品の運搬や施工時にキズが付いたり、加工・溶接などによって亜鉛皮膜が損傷したりする場合があります。
このような箇所では、露出した鋼材の腐食を防ぐため、損傷部分の補修が必要です。
有機ジンクリッチペイントは、塗膜中に高濃度の亜鉛粉末を含んでおり、亜鉛が鋼材より先に腐食する犠牲防食によって、鋼材を保護します。
現場でキズや損傷が発生した場合には、損傷箇所だけを部分的に補修できることがメリットです。
溶融亜鉛めっき補修塗料のことなら日新インダストリーへ
無機ジンクと有機ジンクは、開発の歴史からもわかるように、施工場所や施工条件、要求される性能、上塗りの仕様などを考慮して、適した塗料を選ぶことが重要です。
日新インダストリーは、溶融亜鉛めっきの補修塗料を専門とするメーカーであり、有機ジンクリッチペイントをはじめ、各種補修塗料を取り扱っています。
現場補修の塗料選びにお困りの方は、日新インダストリーまでお気軽にお問い合わせください。補修に最適な工業用塗料をご紹介いたします。
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