豆知識
2025/12/01
化学物質管理者が知っておくべき用語をカテゴリー別に解説
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塗料やシンナーなどに含まれる化学物質を取り扱う事業所では、法令遵守と安全確保の観点から、担当者が理解しておくべき専門用語が数多く存在します。
これらの用語は、SDSの読み解き方から作業環境測定、安全対策、健康管理まで幅広く出てくるため、正しく理解していないと現場のリスク評価が正しくできません。
本記事では、化学物質管理者が最低限押さえておきたい用語をカテゴリー別に整理しました。職場で化学物質管理に関わる方は必見です。
基本的な管理制度に関する用語
まずは基本的な管理制度に関して、以下2つの用語を押さえておきましょう。
SDS(安全データシート)
SDSは、化学物質の危険性や有害性、取り扱い時の注意点、応急処置、法規制情報などをまとめた文書です。
化学物質の製造メーカーは、相手にSDSを交付する義務があります。
現場の化学物質管理ではSDSがすべての基礎となり、保管方法や必要な保護具、法令区分、排気設備の必要性などの判断材料です。
リスクアセスメント
リスクアセスメントは、化学物質に伴う危険性・有害性を把握し、ばく露による健康障害を防止するために必要な手順のことです。
危険性を特定し、リスクの見積もりを行い、低減措置の検討を行います。
リスクアセスメントは労働安全衛生法で義務化されており、実施結果に基づいて換気改善や保護具の選定、化学物質の代替化などの管理策を検討する手段です。
SDS第15章「適用法令」に関する用語
SDSの第15章には、対象の化学物質にどの法律が関係するかがまとめられています。
それぞれの法令の概要を確認していきましょう。
労働安全衛生法(安衛法)
労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守るための法律です。
化学物質の管理では、ラベル表示・SDS交付義務、リスクアセスメント、作業環境測定、特殊健康診断など、多くの規制が安衛法に基づいています。
事業者が最も頻繁に関わる基本法令です。
特定化学物質障害予防規則(特化則)
特定化学物質障害予防規則は、「特化則」と呼ばれており、アスベスト、ベンゼン、金属類など、特に有害性が高い物質に関する詳細な規則です。
作業環境測定の頻度、局所排気装置の設置、作業主任者の選任、健康診断の項目などが規定されています。特化則対象の化学物質を扱う場合、通常より厳しい管理が必要です。
有機溶剤中毒予防規則(有機則)
有機溶剤中毒予防規則は、「有機則」と呼ばれており、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)などの有機溶剤を対象とした規則です。
換気設備の要件、作業主任者の選任、保護具の種類、作業環境測定などが細かく定められています。塗装や洗浄工程のある事業場と関連性が高い法律です。
化学物質排出把握管理促進法(化管法、PRTR法)
化学物質排出把握管理促進法は、別名「PRTR法」とも呼ばれており、化学物質の環境排出量の届け出を求める法律です。
一定量以上の化学物質を取り扱う事業者は、年間の排出量や移動量を行政に届け出る義務があります。
SDS交付義務の根拠法でもあるため、化学物質管理者は理解しておかなければなりません。
毒物及び劇物取締法(毒劇法)
毒物及び劇物取締法は、「毒劇法」と呼ばれており、急性毒性の高い物質を規制する法律です。
毒物や劇物の保管、譲渡、表示、管理方法が詳細に定められています。
開封や施錠管理、使用記録など、独自の管理要件も多いため、対象の化学物質を扱う際は注意が必要です。
化学物質の分類に関する用語
化学物質の分類に関して、押さえておきたい用語は以下の2つです。
それぞれの用語を確認していきましょう。
特定化学物質
特定化学物質は、安衛法に基づき、発がん性や慢性毒性など、特に健康影響が強い物質の総称です。
特化則で規制されている化学物質であり、作業環境測定や換気設備などの義務が適用されます。
SDSの危険有害性分類を見る際の重要ポイントです。
有機溶剤
有機溶剤は揮発性が高く、人体に吸入されやすい溶剤のことです。
刺激性が高く、中枢神経抑制作用や肝毒性などさまざまな健康影響があるため、有機則によって管理基準が細かく規定されています。
塗装、洗浄、脱脂工程などでよく使用されています。
作業環境管理に関する用語
作業環境管理に関しては、以下3つの用語を押さえておきましょう。
それぞれの概要を確認していきます。
作業環境測定
作業環境測定は、作業場所の空気中濃度が管理濃度以下であるかを確認するための測定です。
対象物質が規定されており、第1管理区分〜第3管理区分の判定結果によって換気改善などの措置が必要になります。
ばく露防止の実効性を評価する重要な工程です。
局所排気装置
局所排気装置は、化学物質の蒸気やミスト、粉じんを発生源で捕集して排気する設備のことです。
フード形状、ダクト径、風量、静圧などの要件が規定されており、定期自主検査が必要となります。
適切に稼働しているかどうかで、化学物質のばく露濃度が大きく変わります。
管理濃度・許容濃度
化学物質について「これ以上の濃度では作業させてはいけない」と定められた基準値のことです。
管理濃度は、労働安全衛生法に基づく基準で作業環境測定の判定に使用されます。
許容濃度は、国際的な専門機関であるACGIH(米国産業衛生専門家会議)が示す濃度です。
どちらも化学物質管理の優先順位を決める際の根拠となります。
健康管理に関する用語
健康管理に関しては、以下2つの用語を確認することが大切です。
それぞれの概要を確認しておきましょう。
特殊健康診断
特殊健康診断は、特定化学物質、有機溶剤、鉛、石綿など、健康リスクの高い物質を扱う作業者に対して義務づけられた健康診断です。
項目は物質ごとに異なり、医師による就労判定が必要となります。
継続的なばく露管理には欠かせない制度です。
健康管理手帳
健康管理手帳は、特定の化学物質に長期間ばく露し、将来的に健康影響が現れる可能性がある労働者に対して交付される公的な手帳です。
発がん性物質や慢性毒性をもつ物質は、退職後に症状が出るケースもあるため、継続した健康管理が欠かせません。
この手帳を持っていると、退職後も定期的に健康診断を無料で受けられ、早期発見と早期対応につなげられます。
安全対策に関する用語
安全対策に関する用語は、以下の2つを覚えておきましょう。
それぞれの概要を確認していきます。
呼吸用保護具
呼吸用保護具は、化学物質の蒸気や粉じんを吸い込むことによる健康被害を防ぐための必須装備です。
代表的なものには、防毒マスク、電動ファン付き呼吸用保護具、外部から清浄空気を供給するエアラインマスクなどがあり、物質の種類や濃度、作業時間によって最適な機種が異なります。
適切なフィット感の確保や、吸収缶・フィルタの交換時期の管理ができていないと十分な保護効果が得られません。
作業内容に応じて正しい機種選定と維持管理を行うことが、ばく露防止の基本となります。
化学物質管理者
化学物質管理者は、安衛法に基づき事業場で選任される専門的な管理担当者です。
化学物質に関するリスクアセスメントの実施、SDSの内容確認、保管や使用状況の点検、作業手順の整備、教育の実施など多岐にわたる業務を統括します。
現場のリスクを的確に把握し、換気設備や保護具の選定、代替化の検討など、職場全体の安全レベルを向上させる中心的役割を担う人材です。
化学物質管理者の役割や職務内容については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、参考にしてください。
参考:化学物質管理者とは?職務内容やリスクアセスメントとの関係を解説
まとめ:管理者が最初に取り組むべきこと
化学物質管理の第一歩は、SDSに記載された危険性や法令情報を正しく読み解き、リスクアセスメントを確実に実施することです。
そのうえで、扱う化学物質がどの規制に該当するかを整理し、必要な換気設備の点検、作業環境測定、保護具の選定、従業員教育を段階的に進めていきましょう。
用語や制度の理解は、現場で適切な判断を行うための基礎となり、管理者が現場の安全水準を着実に引き上げるための大切な土台となります。
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